オリエント「2つの疑問」
高校世界史の教科書は…
「オリエントと地中海世界」から始まる。
でも…
(どうやら場所を表すらしいけど)
①「オリエント」って「どこ」だろう?
それに…
(古代オリエントなんていう言葉もある)
②「古代オリエント」って、いつの頃だろう?
●「オリエント」って「どこ」?
山川の世界史教科書には…
オリエントはどこか?
という「説明」はない。
けど…
上の2枚の地図で
述べては、いる。
オリエントとは…
以上、5つの場所(地域)の
「総称」なんだ。
●「古代オリエント」って「いつ」?
古代とは、時代区分の名称。
時代区分には、複数のスタイルがある。
山川の世界史教科書は
世界史を5つの時代に区分する
「五分法」を採用している。
古代‐中世‐近世‐近代‐現代
山川の世界史教科書は
第Ⅰ部が古代
第Ⅱ部が中世
第Ⅰ部
第1章 オリエントと地中海世界
第2章 アジア・アメリカの古代文明
第3章 内陸アジア世界・東アジア世界の形成
第Ⅱ部
第1章 イスラム世界の形成と発展
第2章 ヨーロッパ世界の形成と発展
第3章 内陸アジア世界・東アジア世界の展開
「古代オリエント」の時代とは…
メソポタミア文明・エジプト文明に始まり、
イスラム世界が形成される前までの時代。
山川の世界史教科書
第Ⅰ部‐第1章‐第1項
「古代オリエント世界」は
…という内容になっている。
「古代オリエントとは○○の時代」
というような「説明」はないけど
「古代オリエント」の時代とは…
メソポタミア・エジプト文明の始まりから
ローマ帝国とパルティア・ササン朝両帝国による
抗争の時代。
という「捉え方」で問題ないと思う。
●まとめ
山川の世界史教科書
『詳説世界史B』16ページ。
オリエントとはヨーロッパからみた「日ののぼるところ、東方」を意味し、
今日「中東」と呼ばれる地方を指す。
このオリエントの説明(定義)なんだけど
気になるところが2カ所ある。
「意味し」と「中東」だ。
「意味し」というと、「オリエント=ヨーロッパからみた東方」となる。
するとオリエントとは、中国や日本も含む「東洋」を指すことになるし、
実際そのように使われたこともある。
ただし、現在はそのような使われ方はしない。
それどころかアメリカではorientは差別語扱いだ。
英語圏でorientという用語は使わない。
『大英博物館版 図説古代オリエント事典』の原書名は
British Museum Dictionary of the Ancient Near East だし、
一般社団法人 日本オリエント学会の英語名は
The Society for Near Eastern Studies in Japan だ。
また「中東」と言う語は、地理的な境界によって画定されているものではなく、
「国際情勢の変化に敏感な」言葉だ。
古代オリエントを説明するのに、ふさわしい言葉だとは思えない。
→詳しくは下の「おまけ」をみてね(^_^)
オリエントの説明(定義)を読み替えると
このようになると思う
↓
オリエントとはヨーロッパからみた「日ののぼるところ」
すなわち「東方」を意味するラテン語(オリエンス)に由来するが、
今では英語圏で使われていない言葉だ。
この章では「オリエント」を、
エジプト、小アジア、シリア・パレスチナ地方(東地中海岸)、メソポタミア、イラン高原からインダス川にかけての地域
を総称する用語として用いる。
●おまけ
「中東」という言葉は
よく聞く。
でも、どこか?
と聞かれると困ってしまう。
というような「地理的要因」に基づいていないからだ。
「中東」は…
政治的な視点に基づいて範囲が決められる言葉。
だから、どのような視点で見るかによって
範囲はバラバラだ。
具体例をあげよう。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E6%9D%B1
これは、ウィキペデイアの画像。
伝統的中東(深緑色)と
G8によって提案された拡大中東(薄緑色)
でかなり違う。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/middleeast.html
これは、外務省サイトの画像。
あれ!!
エジプトが入っていない?
https://www3.nhk.or.jp/news/special/new-middle-east/how-we-got-here/
これは、NHKのサイトの画像。
https://www.britannica.com/story/are-the-middle-east-and-the-near-east-the-same-thing
そして、ブリタニカのサイト。
このブリタニカの画像と
さっきのNHKのサイト画像
比べて「違い」に
お気づきだろうか?
NHKのサイト画像では
「中東」に含まれていない
アフガニスタンとスーダンが
ブリタニカの画像では
「中東」に含まれている。
ブリタニカの画像は
「2012年」の時点での「中東」。
南スーダンは2011年に独立している。
ブリタニカが「2010年」の時点での「中東」を描けば
「2012年」の時点での「中東」とは異なるだろう。
NHKのサイト画像以外、どの画像でも
アフガニスタンを「中東」に入れている。
これは…
2001年の9・11事件が影響している。
「9・11事件」が起こる前
のアフガニスタンは
パキスタンと同じ南アジア
あるいはタジキスタンなどとつながる中央アジア
の一部と捉えられていた。
「9・11事件」を起こしのは、テロ組織「アルカーイダ」。
そのテロ組織を支援するアフガニスタンのターリバーン政権はけしからん!
…そのような米国の視線と各国の追随がなければ
アフガニスタンは「中東」にならなかったはずだ。