ゆうぞう⭐高校世界史を学び直す

佐藤優『読書の技法』を読み,「高校世界史」の“学び直し”を決意するが,神教科書の「難しさ」に心が折れそうに.そこで…図書館通いと歴史書の乱読を開始♪勉強を始めました🖍現在は「知識のアウトプット」を目指し「高校世界史の教科書を解説する」 YouTubeチャンネルを公開中です‼

オリエント「2つの疑問」

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高校世界史の教科書は…
「オリエントと地中海世界」から始まる。

でも…
(どうやら場所を表すらしいけど)

①「オリエント」って「どこ」だろう?

それに…
(古代オリエントなんていう言葉もある)

②「古代オリエント」って、いつの頃だろう?


●「オリエント」って「どこ」?

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山川の世界史教科書には…

オリエントはどこか?
という「説明」はない。

けど…

上の2枚の地図で
述べては、いる。

オリエントとは…

以上、5つの場所(地域)の
「総称」なんだ。

●「古代オリエント」って「いつ」?

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古代とは、時代区分の名称。

時代区分には、複数のスタイルがある。

山川の世界史教科書は
世界史を5つの時代に区分する
「五分法」を採用している。

古代‐中世‐近世‐近代‐現代

山川の世界史教科書は
第Ⅰ部が古代
第Ⅱ部が中世

第Ⅰ部
 第1章 オリエントと地中海世界
 第2章 アジア・アメリカの古代文明
 第3章 内陸アジア世界・東アジア世界の形成

第Ⅱ部
 第1章 イスラム世界の形成と発展
 第2章 ヨーロッパ世界の形成と発展
 第3章 内陸アジア世界・東アジア世界の展開

古代オリエント」の時代とは…

メソポタミア文明エジプト文明に始まり、
イスラム世界が形成される前までの時代。

山川の世界史教科書
第Ⅰ部‐第1章‐第1項
古代オリエント世界」は

…という内容になっている。

古代オリエントとは○○の時代」
というような「説明」はないけど

古代オリエント」の時代とは…

メソポタミアエジプト文明の始まりから
ローマ帝国とパルティア・ササン朝両帝国による
抗争の時代。

という「捉え方」で問題ないと思う。


●まとめ

山川の世界史教科書
『詳説世界史B』16ページ。

オリエントとはヨーロッパからみた「日ののぼるところ、東方」を意味し、
今日「中東」と呼ばれる地方を指す。

このオリエントの説明(定義)なんだけど
気になるところが2カ所ある。

「意味し」と「中東」だ。


「意味し」というと、「オリエント=ヨーロッパからみた東方」となる。
するとオリエントとは、中国や日本も含む「東洋」を指すことになるし、
実際そのように使われたこともある。

ただし、現在はそのような使われ方はしない。
それどころかアメリカではorientは差別語扱いだ。

英語圏でorientという用語は使わない。

大英博物館版 図説古代オリエント事典』の原書名は
British Museum Dictionary of the Ancient Near East だし、

一般社団法人 日本オリエント学会の英語名は
The Society for Near Eastern Studies in Japan だ。


また「中東」と言う語は、地理的な境界によって画定されているものではなく、
「国際情勢の変化に敏感な」言葉だ。

古代オリエントを説明するのに、ふさわしい言葉だとは思えない。
→詳しくは下の「おまけ」をみてね(^_^)

オリエントの説明(定義)を読み替えると
このようになると思う

    ↓

オリエントとはヨーロッパからみた「日ののぼるところ」
すなわち「東方」を意味するラテン語(オリエンス)に由来するが、
今では英語圏で使われていない言葉だ。

この章では「オリエント」を、
エジプト、小アジア、シリア・パレスチナ地方(東地中海岸)、メソポタミアイラン高原からインダス川にかけての地域
を総称する用語として用いる。

 

●おまけ

「中東」という言葉は

よく聞く。

でも、どこか?
と聞かれると困ってしまう。

メソポタミアギリシアとは違う

メソポタミアなら
ティグリス川とユーフラテス川の流域」

ギリシアなら
バルカン半島の先の方」

というような「地理的要因」に基づいていないからだ。

「中東」は…

政治的な視点に基づいて範囲が決められる言葉。
だから、どのような視点で見るかによって
範囲はバラバラだ。

具体例をあげよう。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E6%9D%B1
これは、ウィキペデイアの画像。

伝統的中東(深緑色)と
G8によって提案された拡大中東(薄緑色)
でかなり違う。

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https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/middleeast.html
これは、外務省サイトの画像。
あれ!!
エジプトが入っていない?

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https://www3.nhk.or.jp/news/special/new-middle-east/how-we-got-here/
これは、NHKのサイトの画像。

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https://www.britannica.com/story/are-the-middle-east-and-the-near-east-the-same-thing

そして、ブリタニカのサイト。

このブリタニカの画像と
さっきのNHKのサイト画像

比べて「違い」に
お気づきだろうか?

NHKのサイト画像では
「中東」に含まれていない
アフガニスタンスーダン

ブリタニカの画像では
「中東」に含まれている。

ブリタニカの画像は
「2012年」の時点での「中東」。

南スーダンは2011年に独立している。

ブリタニカが「2010年」の時点での「中東」を描けば
「2012年」の時点での「中東」とは異なるだろう。

NHKのサイト画像以外、どの画像でも
アフガニスタンを「中東」に入れている。

これは…

2001年の9・11事件が影響している。

「9・11事件」が起こる前
アフガニスタン

パキスタンと同じ南アジア
あるいはタジキスタンなどとつながる中央アジア
の一部と捉えられていた。

「9・11事件」を起こしのは、テロ組織「アルカーイダ」。
そのテロ組織を支援するアフガニスタンのターリバーン政権はけしからん!

…そのような米国の視線と各国の追随がなければ
アフガニスタンは「中東」にならなかったはずだ。 

●参考文献
池内 恵 「中東」概念の変容
『中東協力センターニュース 2018・7』