ゆうぞう⭐高校世界史を学び直す

佐藤優『読書の技法』を読み,「高校世界史」の“学び直し”を決意するが,神教科書の「難しさ」に心が折れそうに.そこで…図書館通いと歴史書の乱読を開始♪勉強を始めました🖍現在は「知識のアウトプット」を目指し「高校世界史の教科書を解説する」 YouTubeチャンネルを公開中です‼

○○人とは○○民族のことなのか?

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世界史の本を読んでいると「○○人」とか「○○民族」という言葉に出会う。

ゲルマン人ゲルマン民族は同じなの?
違うなら、どう違うの?

そんな疑問をもったことはないだろうか。

さすが予備校の先生!!
「疑問」にズバリと答えていた。

「民族」という言葉はとても難しい概念で、この言葉をシンプルに、子どもにでも分かるように説明できる人はいない。
だから、この言葉は教科書からは消えていってる。

一例を挙げる。旧来は「ゲルマン民族」と呼んでいたのが、最近の教科書のほとんどでは「ゲルマン人」と呼んでいる。
なぜか?
「民族」の概念は19世紀以後に登場するとした方が適切だからである。

とはいえ、「民族」の語をあてないと説明できないことも多いため、現実には19世紀以前でも用いることが少なくない。
要するに、過度に気にしない方がいいということである。

  荒巻豊志『荒巻の新世界史の見取り図 上』(2010年)東進ブックス

 荒巻先生の言う通りなんだけど…

「民族」の語をあてないと説明できない、というか
「民族」を「○○人」と言い換えているだけ。
という場合も多い。

 

●教科書を読んで数えてみた

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山川の世界史教科書『詳説世界史B』は、全部で16章の構成になっている。

○○人や「○○人とは表していないけど実際はそう言っている」表現が、本文に何回登場するか。
数えてみた。複数回登場する場合は、最初の一回だけ

第1章(17) 第2章(11) 第3章(13) 第4章(6) 第5章(26) 第6章(5)
第7章(10) 第8章(0) 第9章(2) 第10章(1) 第11章(1) 第12章(5)
第13章(2) 第14章(4) 第15章(0) 第16章(0)

第1章「オリエントと地中海世界」に登場する17個の用語は、下記の通り

シュメール人
アッカド
アムル人
ヒッタイト
カッシート人
ヒクソス
カナーン
海の民
アラム人
フェニキア
ヘブライ
イラン人(ペルシア人)
アム川上流のギリシア人(バクトリア人)
遊牧イラン人(パルティア人)
農業に基礎を置くイラン人
エフタル
突厥


「シュメール語」を話していた集団が「シュメール人」というように、
「○○人」というときは…
言語によって人間集団を分けている場合が多い。

山川『詳説世界史B』では「民族」という言葉を
「言語・宗教・習慣などの文化的特徴によって人類を集団にわける考え」としている。

確かに…
グループ分けの基準として、宗教・習慣よりも言語の方が分かりやすい。

 

●語族? 語派? 語系?

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山川『詳説世界史B』13ページには、「世界の諸言語の系統分類表」がある。

「語族」とは、同じ言語(祖語)から分かれた言語グループ。
「語派」は、語族の下位グループだ。

この分類表を、よく見ると小さな字でこんな“注意書き”がある。

*なお、同じ系統の言語を話す人間集団を呼ぶ場合には、「~語系」というあらわし方がよく使われる。

なるほど…

セム語系のアッカド人」というのは
セム語派の言語であるアッカド語を話していた集団」という意味で理解すればいい。

 

歴史学者のわがまま

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山川『詳説世界史B』のように、
「語族・語派」という用語を「語系」という言葉を使って“変換”するのはありだな、と思う。

しかし…

断りもなく意味が「すり替えられている」こともあるから、困っちゃう。

繰り返すけど…
「語族」とは、同じ言語(祖語)から分かれた「言語の集まり」。

けれども、歴史学者の書く本では
「語族」を同じ言葉を話す「人間集団」としている。

どうやら、これは歴史学者にとっては常識で…

青木健『アーリア人』(2009年) 講談社
(名著です!!)

この本の中で青木先生は、ズバリ書いている。
「語族とは、言語的特徴によってつくられる集団の総称である」

世界史の勉強をする僕たちにとっては
「語族」を同じ言葉を話す「人間集団」と理解せざるを得ないようだ